校長室より

校長  近藤 哲史

令和7年度

始業式式辞(令和7年4月8日)

 昨日の入学式で、入学を許可した新入生360名も加え、さらに先ほど紹介した新・転任の先生方もそろわれて、令和7年度が本日からいよいよ本格的にスタートします。

さて、本日は、年度の初めにあたり、学習評価についてお話しします。

皆さんは、3月に通知表を受け取りましたね。1年生の皆さんは、在籍していたそれぞれの中学校で渡されたと思います。

その通知表には、何が書かれていましたか? 1年間の学校生活の記録として、成績と出席の状況などが記されていましたね。その中の成績のところは、各教科・各科目の観点別の評価としてA、B、Cが、また、評定として1から5までの数字が書かれていましたね。

今日は、通知表の中のA、B、Cが付いていた部分、これを観点別学習状況の評価と言いますが、この観点別評価についてお話しします。

観点というのは観るポイントのことですが、どの教科も同じ観点で評価をします。観点は全部で三つありますが、知っていますか? 「知識・技能」と「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」の三つの観点です。

「知識・技能」の評価とは、各教科・科目における学習をする中で出てきた知識や技能が身に付いているかを観ることです。技能というのは、例えば数学や理科では公式を使うこと、国語や英語では「読む」「聞く」「書く」「話す」にあたります。

「思考・判断・表現」の評価とは、各教科・科目の知識と技能を活用して課題を解決するために、考え、判断し、そして表現できるかを観ることです。

「主体的に学習に取り組む態度」の評価とは、知識や技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力を身に付けたりするために、自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら、粘り強く学ぼうとしているかを観ることです。

「知識・技能」と「恩考・判断・表現」の具体的な評価方法としては、例えば、今日から始まる学力テストや年間4回ある定期考査などのペーパーテストが最も分かりやすいかと思いますが、授業の中でも、観察や実験、論述やレポートの作成、発表、グループでの話し合い、作品の制作などさまざまな方法で評価しています。

「知識・技能」と「恩考・判断・表現」の評価は、テストでは、それぞれの観点の点数が付いていたり、授業中の活動においても評価の規準が示されていたり、比較的分かりやすいと思います。

それでは、「主体的に学習に取り組む態度」はどのように評価されているのでしょうか。テストの結果にも出てこないし、授業中にもあまり意識していないのではと思います。

「主体的に学習に取り組む態度」の具体的な評価方法としては、ノー卜やレポートなどの記述、授業中の発言、先生による行動観察などが、まず挙げられます。他に、生徒による自己評価や相互評価の状況を、評価を行う際に考慮する材料の一つとして用いるということになっています。しかし、皆さんの学習状況すべてを逐一確認して、主体的かどうかを判断するには、膨大な時間がかかります。先生方もいろいろと工夫して取り組んでいますが、現在の状況は、皆さんの家庭学習の状況から判断することが主たる評価方法となっています。つまり、課題の提出状況からの評価です。

家庭学習の状況から判断することは、学習への主体性を評価するのにとてもよい方法ではありますが、全員に一斉に与える課題という方法となると少し話が変わってきます。

というのは、「主体的に学習に取り組む態度」の評価には二つのポイントがあって、一つは、「学習に粘り強く取り組もうする態度」で、二つ目は、「自らの学習を調整しようとする態度」です。

「全員に一斉に与える課題」の問題点は、何でしょうか?

それは、全員に同じことを指示しているので「自らの学習を調整しようする態度」を評価することができないということです。

2・3年生の人には、3月の終業式の挨拶で「一斉の課題をなくしたい」とお話ししましたが、その理由の一つがここにあります。

「自らの学習を調整する」とは、自分は何ができて、何ができないかという、自らの学習状況をきちんと把握して、どんなふうに学習を進めたらよいか試行錯誤しながら、自分の最善の方法を見出していくことです。私は、このことを「学び方を学ぶ」と言っていますが、社会に出てからもあらゆる場面で必要なとても大切な態度であると思っています。

現在、皆さんの家庭学習ができていない訳ではなく、一生懸命取り組んでいると思います。ただ、「指示されて行う」ことと「自ら考えて取り組む」ことでは、学習効果が大きく違います。「一斉の課題をなくす」こと、是非とも実現したいと思っています。皆さんのこれからの取組に期待します。

関連して、もうひとつお願いですが、3月にもらった通知表を見て、自分の学習状況は把握できましたか? A,B,Cと1から5までの数字だけではなかなか分かりませんよね。通知表は、1年を総括する評価なので簡単な表し方になってしまいます。自分の学習状況を把握して、調整するためには、テストや授業の成果を日々振り返ることが大切です。今日から始まる学力テストもとても良い機会です。全力で取り組み、結果をきちんと受け止めて、何ができて何ができていないかをしっかりを把握して、次の学習の調整をしてください。もし、いろいろと工夫しているのにうまく成果が出ないときには、担任の先生や教科の先生に相談してください。全力でサポートします。

今日は学習の話をしましたが、この1年、生徒一人ひとりが、さまざまな場面で活躍する姿が見られることを楽しみにしています。 以上、令和7年度前期始業式の式辞といたします。

入学式式辞(令和7年4月7日)

式 辞

桜の木々が咲き誇り、あらゆる生命が躍動する気配を感じさせる爽やかな今日の佳き日、PTA会長・手島奈央様をはじめとするPTA役員の皆様、並びに新入生の保護者の皆様方の御臨席を賜り、令和七年度愛知県立西尾高等学校入学式を、このように盛大に挙行することができますこと、心より感謝申し上げます。

ただ今、入学を許可しました三百六十名の新入生の皆さん、創立百七年の輝かしい歴史と伝統のある西尾高校へようこそ。教職員・在校生徒を代表し、心から歓迎いたします。

また、こうして入学の時を迎えた、新入生の喜びの大きさもさることながら、これまで深い愛情をもって育んで来られたました保護者の皆様には、お喜びもひとしおのことと拝察いたします。お子様のご入学、誠におめでとうございます。

さて、みなさんは、本校のスクール・ポリシーを見たことはありますか? きっと高校を選ぶ際に、本校のホームページを見て、スクール・ポリシーを読んだのではないかと思います。スクール・ポリシーは、三つのポリシーで構成されています。一つ目が「目指す生徒像」、二つ目が「本校における学び」、三つめが「入学を期待する生徒像」です。きっと皆さんは、三つ目の入学を期待する生徒像というところをよく読んで、自分はその生徒像であると考え、本校を選んでくれたのではないかと思っています。

今日は、三つのポリシーのうちの一つ目の「目指す生徒像」についてお話します。この「目指す生徒像」は、本日入学した皆さんが、三年後の卒業するときに、なっていてほしい姿のことです。具体的に四つの姿を示していますので、今からその四つを読み上げます。

一つ目は、「自分で考える力を身に付け、自分の言葉で伝えることができる人」。二つ目は、「広い視野と柔軟な思考力を身に付け、変化の激しい社会を主体的に生き抜くことができる人」。三つめは、「自他ともに尊重し、多様な人々と積極的に協働することができる人」。四つ目は、「人の役に立つことに喜びを感じ、社会に貢献しながら自己実現を目指すことができる人」です。

我々教職員は、皆さんがこの姿になるよう全力で取り組みますので、皆さんもこの姿になれるよう、学校生活を送る中で常に意識しながら過ごしてほしいと思います。

それでは、どのように意識して、そして行動すればよいかということについて、一つ具体的な例を示します。私は、学校行事の開会のあいさつで常に生徒へ呼びかけていることがあります。それは、「この行事を、参加している全員が楽しめるようにしてください」という呼びかけです。「行事を楽しむことなんて、当たり前で、そんなに難しいことではないのでは?」と思った人もいるかもしれませんが、「全員が楽しむ」となったらどうでしょうか?

例えば、体育祭や球技大会で、運動の苦手な子がいたときに、その子が楽しむにはどうしたらよいか。文化祭で、見に来てくれた保護者の方全員に楽しんでもらうためにはどんな企画をしたらよいか。

一部の人が楽しむことは簡単かもしれませんが、全員が楽しむということは、そんなに簡単ではないですよね。

「全員が楽しむ」というミッションを達成するためには、先ほど紹介したポリシーの「目指す生徒像」が必要になります。

まずは、一つ一つの行事の中で、自分の役割を自ら考えて、主体的に楽しもうとする姿勢が必要です。そして、自分だけでなく、周りにいる人が楽しむためにはどうしたらよいか考え、ときには助け合い、必要なら働きかけや支援を行うといった「やさしさ」と「気配り」が必要です。さらに、行事が終わった時には、全員が楽しめたことに喜びを感じて、社会に貢献することの重要性を感じ、達成感を得ることができます。

今は、学校行事を例としてお話をしましたが、授業や部活動を行う時も同じです。ポリシーの「目指す生徒像」を意識して行動すれば、充実した楽しい学校生活を送りことができ、一歩一歩成長することができます。そんな姿をこれからの三年間で大いに見せてください。皆さんの活躍する姿が見られることを楽しみにしています。

保護者の皆様、高校の3年間は、これからの人生の方向を決定する大切な時期ではありますが、最も多感な時期であり、悩み苦しむこともあると思います。私たち教職員は、お子様が自ら進むべき道を自分で切り拓いていけるよう全力を尽くしてサポートして参りますが、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも相互に信頼し、連携しながら、子どもたちの豊かな個性を伸ばしてあげたいと思っています。どうか本校の教育活動に対する御理解と御協力、そして御支援を賜りますようお願いいたします。

本日、入学された皆さん全員が本校で充実した日々を過ごされ、人生の確かな礎を築くことを祈念して式辞といたします。

令和6年度

後期終業式あいさつ(令和7年3月21日)

令和6年度が間もなく終わろうとしています。今日は、皆さんにこの1年を振り返ってみてほしいと思います。振り返りの基準は、本校のスクール・ポリシーの目指す生徒像です。本校のスクール・ポリシーは、ホームページでも公開しますので知っていますよね。具体的な内容は、目指す生徒像、本校における学び、入学を期待する生徒像の三つです。その中の、今から振り返ってもらう「目指す生徒像」は、皆さんが3年間本校で学んで、卒業するときに実現してほしい姿であり、全部で四つあります。今から読み上げますから、どの生徒像が達成できているか、皆さんが取り組んださまざまな学校での活動を振り返って、考えてみてください。

一つ目は、自分で考える力を身に付け、自分の言葉で伝えることができる人。

二つ目は、広い視野と柔軟な思考力を身に付け、変化の激しい社会を主体的に生き抜くことができる人。

三つ目は、自他ともに尊重し、多様な人々と積極的に協働することができる人。

四つ目は、人の役に立つことに喜びを感じ、社会に貢献しながら自己実現を目指すことができる人。

いかがですか。四つのうちでいくつ達成できていますか。もしもまだ達成できていないものがあるのであれば、2年生はあと1年、1年生はあと2年ありますからその中で、達成できるように努力していきましょう。

今は、それぞれに振り返ってもらいましたが、ここからは、私がこの1年、皆さんの学校での生活ぶりを見ていて感じたことを基に、来年度取り組んでほしいことを提案します。

一つ目は、家庭学習についてです。これは、先ほどの目指す生徒像の一つ目の自ら考える力を身に付けることと、二つ目の主体的に生き抜くことに繋がります。現在の家庭学習の状況は、先生方が全員に同じ課題を与えて、提出させるという方法が多いと聞いています。なぜ、そのような方法で行っているかと先生方に尋ねたところ、そうしないと家庭で勉強をしないという答えが返ってきました。これでは、自ら考える力や、主体的に取り組む力は育ちません。先生方には、生徒が自ら考え、主体的に家庭学習に取り組めるような働きかけをしてくださいとお願いしています。目標は、全ての課題をなくすことです。そのためには、皆さんが自分で家庭学習に取り組む姿勢を見せる必要があります。一人一人が、自分に必要な学習を、自ら工夫して効率よく効果的に取り組むという、理想的な姿を目指していきましょう。

二つ目は、生徒会活動についてです。1月にクールビズに関するアンケートが生徒会主導で実施されました。アンケートの結果を生徒会の執行部の皆さんがとてもうまくまとめてくれて、クールビズが必要だということがよく分かりました。ただ、気になったことが一つあります。それは、生徒の皆さんの回答数です。ここにいる1,2年生およそ700人が対象だったのですが、回答数はおよそ300という数で、半数に満たない人しか回答していないということでした。アンケートではクールビズを求める割合が高いという結果でしたが、この回答数では、多くの生徒の意見であるということに疑問が出てしまいます。回答をしなかったおよそ400人の皆さんは、このアンケートをどのように捉えていたのでしょうか。このことは、目指す生徒像の三つ目の積極的に協働できることと、四つ目の社会に貢献しながら自己実現できることに繋がると思います。「当事者意識」という言葉を聞いたことがあると思いますが、学校生活に関わる事柄に対して、「誰かがやってくれるだろう」と傍観しているのではなく、自分が当事者であるという意識をもっと強くもって、生徒会の活動そして学校行事に参加してほしいと思います。

これが最後になりますが、三つ目は部活動についてです。先日、本校における部活動の活動方針をホームページにアップしました。これは、以前からすでに定めていた方針について、改めて生徒の皆さんや保護者、地域の皆さんに周知するために公開したものです。確認のため、内容の一部を読み上げます。

・活動時間について、平日は2時間程度、学校の休業日(夏休みとか土日のことです)は3時間程度とする。

・休養日について、週当たり2日(平日に1日と土日のいずれか1日)以上設ける。

・早朝練習は原則として行わない。

・定期考査1週間前は部活動を行わない。

・夏季休業中は、練習日が合計20日間を超えないように計画する。

・保護者の理解と協力は、部活動の運営上欠かすことができない大切なことであることから、顧問としての指導に関する基本方針・活動計画・活動時間・休養日等を明確にし、保護者に示す。

いま読み上げたものは一部ですので、部活動に所属している生徒の皆さんは、全文を確認しておいてください。このような方針に基づいて部活動を行うことになっています。いろいろと制限しているのは、皆さんが学校生活、そして家庭での生活をバランスよく送れるようにするためです。授業はもちろん、家庭学習にもしっかりと取り組めて、そして、家族との時間や休養を十分とれるように、この活動方針を守ってほしいと思います。さらに、制限をしているのは、もう一つ理由があります。それは、顧問をしている先生方の生活を守るためです。「働き方改革」という言葉を聞いたことがあると思います。先生方が、学習指導や生活指導など皆さんへの指導を充実して行えるためには、先生方にも休養や自分の時間が必要です。皆さんには、このことも十分理解して活動してほしいと思います。

部活動に関してもう二つお願いがあります。一つ目は、顧問の先生が必ずしも専門性をもっていないということです。学校における先生方の配置は、授業を行う教科の数によって決まっています。例えば、国語を専門とする先生が9人、数学が12人といった具合です。西尾高校には、○○という部活動があるからその専門の先生を配置するということはありません。新年度に向けて、先生の異動もあり、顧問の先生が変わることがあります。専門性のある先生が顧問に就くこともありますが、そうでないことのほうが多いのが現状です。部活動は学校教育の一環として行っていますので、どの部活動にも必ず顧問の先生がついて活動しなければなりません。顧問の先生が示した基本方針をきちんと理解して、そして活動についてはよく相談して、決められたルールや時間の中で、部員同士でも協力しながらして取り組むことができるようお願いします。

二つ目は、今後の部活動の在り方です。現在、運動部は16の部がありますが、男女で分かれて活動している部が5あるので、合わせると21の部、そして、文化部は13の部があり、かなり多い部活動の数です。愛知県内の中学生の数は、これから3年間で急激に減り、今より4000人減少します。単純に1クラス40人で計算すると、100クラスの減少です。西尾高校は今1学年9クラスで、県下でも多いクラス数なので、クラスが減る可能性があります。それに伴い、部活動の数も見直す必要があります。来年度は、これからどのように部活動を運営していくかを検討します。皆さんの意見ももちろん聞きながら検討しますが、休部や統廃合などをすることになるかもしれないということを十分理解して議論に参加してほしいと思います。

以上、家庭学習について、生徒会活動について、部活動についての三つの提案をしました。

いずれも皆さんに期待したいことは、今日の最初に言った本校のスクール・ポリシーの目指す生徒像の達成です。このことを常に意識しながら生活していってください。

4月から始まる令和7年度も、ここにいる生徒の皆さん全員、そして先生方全員が楽しい学校生活が送れるよう、全員で頑張っていきましょう。

以上で後期終業式の挨拶を終わります。

七十七回卒業証書授与式 校長式辞(令和7年3月1日)

 そよぐ風に、すこしずつではありますが春の気配を感じる季節となりました。

 本日、愛知県立西尾高等学校第七十七回卒業証書授与式を、PTA会長・手島奈央様、同窓会長・三浦眞澄様をはじめ、ご来賓の方々のご臨席を賜り、また、多くのご家族の皆様の御列席のもとに、このように盛大に式が挙行できますことを、たいへん有り難く思います。心より厚くお礼を申し上げます。

 卒業生へのはなむけの言葉に先立ちまして、まずもってご家族の皆様に一言、お祝いを申し上げたいと存じます。

 ご家族の皆様におかれましては、お子様が入学されて以来、その成長を見守り続けられ、今日という佳き日を迎えられました。お喜びもひとしおのことと拝察し、職員一同を代表して、心よりお祝いを申し上げます。誠に、おめでとうございます。

 ただいま卒業証書を授与した三百四十六名の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんの門出を心から祝福します。

 私は、昨年の四月に西尾高校に赴任し、皆さんとは一年間一緒に過ごしました。皆さんが、この三年間を振り返ったときに、一番印象に残っているのは、やはり二年生のときの修学旅行でしょうか。大雨のために予定外に大阪で一日泊まったことは、とても貴重な経験だったと思います。その日のことは、私もよく覚えています。当時、私は県の教育委員会にいました。夕方に電話がかかってきて、新幹線が止まってしまい、修学旅行に行っている生徒が帰れないという報告でした。調べると、大阪付近で新幹線の中で待たされている学校が複数あることが分かりました。すぐに関係各所に連絡をして、各学校と連絡をとりながら、どのような対応が必要か検討しました。時間の経過とともに、少しずつ状況がよくなり、近鉄に乗り換えて名古屋に帰る、大阪でもう一泊するなど解決策が出てきました。全ての学校が対応できたという報告が届いたのは、夜の十時を過ぎたときでした。関係する生徒の安全が確保されてホッとしたことを今でも思い出します。そして、四月に西尾高校に来て、始業式で三年生の皆さんに会った時に、あの時に大阪で泊まった生徒さんたちだと、初めて会ったのですが、前から知っていたような不思議な感覚がありました。

 この一年間、皆さんは、授業はもとより、学校行事、部活動などさまざまな場面で活躍し、そして、大きく成長してくれました。私が特に感じたことは、学校行事での成長ぶりです。球技大会と体育祭では雨にたたられ、予定を変更して開催をしなければならないところでも、その状況を受け入れてその中で自分のできることを最大限発揮して取り組んでくれました。閉会式で皆さんがとてもすがすがしい表情で校歌を歌っている姿を見せてくれたあの瞬間は、教師としてとても幸せな瞬間でした。

 これから皆さんが進んでいく社会は、変化が激しく、さまざまな困難が待っているかもしれません。その中で、自分のできることは何かを見つけ、それを仲間とともに全力で取り組むことが求められます。そんな社会を生きていくために、皆さんがブラッシュアップするのに必要なことを一つ紹介します。

 それは、「クリティカル・シンキング」です。日本語では「批判的思考」と訳されるので、「「あら探し」や「あげ足取り」(これらは「非難」)と勘違いされるかもしれませんが、そうではなく「批判」とは「物事をきちんと検討し、評価や判定をすること」であり、「クリティカル・シンキング」は「物事を鵜呑みにせず、客観的かつ多面的に吟味し、より正しいあるいは賢い意思決定をするための思考法」です。例えば、あふれる情報の中から、最適なものを選ぶといった時にはとても役立つ思考法です。そして、この思考法は、「自分を知る」ことにつながりますので、これからの社会の中で自分のできることを見つけることができます。さらに、「他人を知る」ことにもつながりますので、仲間との深い絆ができて、一緒に何かを取り組むときの支えにもなります。

 「クリティカル・シンキング」については、生徒会機関誌「天地」に載せておきましたので、ぜひ読んでおいてください。

 最後になりましたが、皆さんは、これまでさまざまな方々に守られ、支えられてきました。ご家族の方々、同窓会の方々、地域の方々です。これからも、その方々は守り、支えてくれることでしょう。また、今後、西尾高校卒というつながりを感じることがあるでしょう。これらのことへの感謝の気持ちを決して忘れずに、いずれは、自分が守る、そして支える存在となるんだという思いをもって、さらに、西尾高校の卒業生というプライドをもって、これから生きていってほしいと強く願います。

 今旅立つ、西尾高等学校第七十七回卒業生の未来に幸多からんことを心から願って、式辞といたします。

令和七年三月一日

愛知県立西尾高等学校長 近藤 哲史

前期終業式ならびに後期始業式あいさつ(令和6年10月2日)

令和6年度前期終業式あいさつ

 本日は「学習の動機づけ」というお話をします。

 動機づけとは、ある物事に突き動かされること、ある目標に向かって労力を割いたり行動したりすることと、ある研究者は言っています。簡単に言うと「やる気」や「学習意欲」と呼ばれるものであり、英語では「モチベーション」と言います。最近は、モチベーションと言った方が聞き馴染みがあるかもしれません

 この学習の動機づけは、1学期にお話しをした、皆さんに実践してもらいたい「主体的、対話的で深い学び」のうちの「主体的な学び」を行ううえできわめて重要な要素になります。

 そこで、学習の動機づけを、自律性(自律は漢字で書くと、自分で立つという自立ではなく、自分を律するほうの自律で、自分から進んでやろうとしているという意味です)という観点で、その自律性の高い、低いという尺度で6つのレベルに分けて説明します。それぞれ具体例を示しますので自分がどの状態であるかを考えながら聞いてください。

 レベル1は、動機づけがない状態で、具体的には「全くやる気が起きない。」状態です。自律性は0ですね。

 レベル2は、報酬や罰などによって取り組んでいる状態で、例えば、先生に叱られるから課題を提出しよう、という状態です。自律性としてはかなり低い状態です。

 レベル3は、外部(親や先生から)の期待や要請に対して、自分の自尊心を維持するために取り組んでいる状態で、例えば、みんなの前で恥をかきたくないから予習しておこう、という状態です。これも自律性としては低いですね。

 レベル4は、外部からの期待や要請に、自分でも価値を認めて取り組んでいる状態で、例えば、親や先生が言うように確かに大学進学をしておいた方が、将来の役に立ちそうだから勉強しよう、という状態です。だんだんと自律性が上がってきました。

 レベル5は、外部の期待や要請を自身の他の側面と有機的に統合して行動している状態で、例えば、将来は食品開発に携わりたいから、大学に進学して化学分野をより深く学びたい、そのための大学進学に向けた学習に取り組もう、という状態です。3年生の皆さんは、現在この状態でしょうか。

 最後のレベル6は、興味・楽しさによって行動している状態で、例えば、数学が純粋に楽しく、自分で先の内容まで学習している、という状態です。これを、内発的動機づけといいますが、外部からの要請などで行動するのではなく、自ら進んで取り組み、そのことに喜びや満足感を見出している状態です。自律性としては100%です。

 いかがですか。自分の今の状態はレベルいくつであったでしょうか。すべての学習が同じ状態であるということはないと思います。きっと、教科や科目によって、また、学習内容によって、それぞれレベルが違うのではないかと思います。

 より自律性のレベルが高い方が、学習定着率が高くなったり、より深い学習につながったりするなど学習効果が高くなるということは皆さんも理解できると思いますが、初めから高い自律性を持っている人はなかなかいません。

 例えば、初めは親や先生が勉強するように言うから勉強をしていた。でも勉強をした結果、クラスで上位になれたことで嬉しくなった。そして学習を続けているうちに数学や情報に興味をもち、情報工学について学びたいと思うようになった。このように段々と自律性のレベルは上がっていくこともありますし、逆に、取り組み方次第では、下がっていくことも無いわけではありません。

 高校生の時期は、発達段階としても自律性が高まる時期です。では、どのように自律性のレベルを上げていったらよいのでしょうか。このお話の続きは、この後の後期始業式でしますので、つぎのあいさつまでの少しの時間ですが自分で考えてみてください。以上で前期終業式のお話しを終わります。

令和6年度後期始業式あいさつ

 先ほどの続きをお話しします。

 学習の動機づけの自律性のレベルをどのように上げればよいか、皆さん考えてみましたか。それでは説明します。

 まず1つ目は、目の前の学習に対して、自分が納得できる理由や目的をつけることです。つまり、レベル1の動機づけなしという状態は少なくとも避けて、どんな理由や目的でもいいので動機づけをして、学習に取り組むということです。そうすると、その学習に対しての自身の自律性のレベルが認識できます。そして、次のレベルに上がるまで、自身で決めた動機づけに従って、粘り強く学び続けるのです。学び続けるうちに、いずれよい結果が出て、それにより自分にとっての新しい価値や将来の目標が見つかったり、満足感になったりして、次のレベルに上がっていきます。もし、いくら取り組んでも、よい結果が出ない時は、その学習への取り組み方に課題がある、つまり学習方法を見直しが必要であることに気付きます。自分で学習方法の改善策が見つからない時は、先生や友達に相談してみましょう。アドバイスを受けることにより、より効果的な学習方法が見つかれば、次のレベルにつながります。このように、目の前の学習に対して動機づけを行い、学び続けることで、必ず前に進むことができます。

 2つ目は、自分の中での自律性のレベルが高い学習を見つけることです。先ほど、教科や科目によって、また、学習内容によって、それぞれレベルが違うという話をしましたが、その中で、一番レベルの高い学習は何かを考えてみてください。この学習をやっていると楽しいとか、満足感があるとか、自分の将来やりたいことにつながっているとか、そんな思いをする学習です。そんな学習が見つかったら、是非、探究的に学んでみてください。探究的な学習とは、自身のやりたいことや問いを解決するために必要な内容を学ぶことです。探究的な学習を進めることで、どんどん楽しくなり、さらに学習が発展していきます。そして、探究学習を進めるうちに将来の目標が明確になり、そのためにあの大学に行きたい、そのためには他の学習も必要だとなれば、他の学習への動機づけの自律性レベルが上がることにもなります。

 ちょうど本日は「探究活動の日」です。自身のやりたいことや問いを解決するために必要な学習を思う存分取り組んでみてください。そして、これからの学習の動機づけとなるようなきっかけを見つけてほしいと思います。

 本日は、学習の動機づけというお話をしましたが、このことは、皆さんの家庭学習をより充実したものにすることにつながると思いますので、是非参考にしてください。ここにいる全員が、自律性レベル6で取り組んでくれることが私の最大の望みであり、西尾高校の生徒の理想の姿であると思っています。

 最後に、3年生の皆さんへ。皆さんの動機づけは、もうすでに自律性レベル5以上で学習意欲の非常に高い状態だと思います。高校生活もあと半年足らずです。限られた時間の中で、自身を最大限に伸ばすためにはどうしたらよいかを考えましょう。自分にとっての効果的な学習方法については、常に探究しながら進めるといいでしょう。そして、現役生の強みは、周りに多くの仲間がいることです。あの西高祭の時に見せてくれた団結力を、これからは学習の場面で発揮し、全員が高いパフォーマンスを出してくれることを願っています。

 以上で、後期始業式のお話を終わります。

令和6年度 進学資料(令和6年6月14日)

2025年度入試、何が変わる? 必要とされる力は?

校長 近藤 哲史 

 来春の入試から大学入学共通テストが大きく変わります。主な変更点は次のとおりです。

◎ 国語の大問に「実用的な文章」が追加、大問ごとの配点変更、試験時間が10分増
◎ 新教科「情報」が新設     
◎ 地理歴史、公民の科目構成、選択方法が変更
◎ 数学Ⅱ・Bが数学Ⅱ・B・Cに拡大し、試験時間が10分増
◎ 数学に「複素数平面」が20年ぶりに復活   
◎ 理科の試験時間が統合される予定

 これらの変化の狙いは、国内外には一つの学問領域では解決できない問題が溢れ、AI(人工知能)の活用が社会に大きな変化をもたらす中、これからの社会で生きていくために必要な「思考力・判断力・表現力」を問う問題を、たとえマークシート方式でも取り入れようとしているということです。

 このような変化は、共有テストだけに留まりません。

 国公立大学では、個別に実施する二次試験で、記述式問題によって受験生の「思考力」や「判断力」「表現力」を測る問題に比重を置く大学が多くなっています。

 私立大学でも、入試で小論文を課す大学や、出願時に民間英語検定試験のスコア提出を求め、合否に反映させる大学が増加しています。

 ほかにも、2025年から一部の学部の入試で共通テストと個別試験を組み合わせると発表する大学など、新たな形態でこれからの時代に不可欠となる学力を測ろうとする大学が相次いでいます。

 例えば、「思考力・判断力・表現力」を測る問題には、次のようなものがあります。

2021年に日本国内で購入されたシャープペンシルの本数を推定し、その数値を回答しなさい(参考データ使用可)。また、その推定値を算出した根拠を分かりやすく、読者が納得できるように説明しなさい(図や表を使っても構わない)。【2022年 慶応義塾大】
あなたにはずっと想い続けているA君がいます。自分以外は誰もその事を知りません。ある日、友人からA君のことを好きだから応援してほしいと言われました。あなたはどうしますか。【2023年 熊本大】
じゃんけんの選択肢「グー」「チョキ」「パー」に、「キュー」という選択肢も加えた新しいゲームを考案しなさい。解答は、新ゲームの目的およびルールを説明するとともに、その新ゲームの魅力あるいは難点も論じなさい。【2018年 早稲田大】

 これらの問題の特徴は、正解が一つではなく、また、何が正解で何が間違いなのかの明確な線引きがないことです。そして、自分なりの正解を出すまでのプロセスを重視しており、どのように論理的に考え、判断したのか、そして、そのことをいかに分かりやすく表現しているか、ということが評価のポイントとなることです。

このような問題を解くためには、どのような準備が必要だと思いますか?

 知識や技能を身に付けることは、とても大切なことですが、それだけでは足りない気がしますよね。

 この問いに対して、自分なりの正解を出して、その根拠を考え、友達と議論してみましょう。私もぜひ皆さんと議論がしたいです。興味のある人は、校長室を訪ねてきてくれると嬉しいです。お待ちしています。

令和6年度 PTA総会 あいさつ (令和6年5月17日)

 皆様、こんにちは。校長の近藤でございます。4月に本校に着任をいたしました。1年生の保護者の皆様には、入学式の折に御挨拶をさせていただきましたが、2、3年生の保護者の皆様には本日が初めてとなります。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日はお忙しいところを、PTA総会に御出席いただき、ありがとうございます。

 新年度がスタートし、おおむね順調に学校の行事を行うことができ、生徒の生活も次第に軌道に乗ってきております。

 1年生は、授業や部活動が本格的に始まりました。2年生はそれぞれ文系、理系に分かれての授業がはじまり、3年生は、進路希望の実現に向けてスタートしています。

 一昨日と昨日は、球技大会を行いました。一昨日からの雨で、昨日朝のグラウンドは、全面水たまりの状況で、中止という選択肢が頭をよぎりました。そんな中、生徒会の執行部の生徒たちが、なんとか実施できないかと知恵を出し合い、先生方の助けを得ながら、実施案を考えてくれました。ソフトボールは午後から実施、バレーボールとドッヂボールは、方法を変えて体育館で実施できるよう調整し、その分バスケットボールはコート半分を使ってできる形に変更するなど、短い時間でとても素晴らしい案を考えてくれて、実施することができました。ソフトボールを行うために、野球部やソフトボール部の部員が中心となり、2時間近く時間をかけてグラウンド整備をしてくれて、ソフトボールも実施でき、無事全ての競技を時間通りに終えることができました。閉会式での生徒の表情はとてもすがすがしく、全員で気持ちよく校歌を歌いました。

 西尾高校のすばらしさを象徴するような2日間でした。

 さて、みなさんも御存じのとおり、西尾高校は2年後に附属中学校を設置して、中高一貫教育を導入します。附属中学の設置に向けて、中学用の校舎や体育館の基本設計が決まり、今年の終わりか年明けくらいから工事が始まる予定です。また、中学での学びの在り方や、制服をどのようなものにするかなど、さまざまなことを検討しており、10月には、受験を希望する小学生と保護者向けの説明会を行う予定です。工事が始まるとやや窮屈な思いをすることがあると思いますが、極力、在校生の学びの妨げにならないように配慮してまいりますので、御理解のほど、よろしくお願いいたします。

 中学設置に向けての準備と併せて、これからの高校での教育の在り方についても、検討を進めております。西尾高校のよき伝統を残しつつ、これからの社会に対応できる生徒の育成のために、変えなければならないこと、新たに取り入れなければならないことは何か、プロジェクトチームを立ち上げて協議しております。必要と思われることは、中学設置を待たずに、今からすぐにでも取り入れようと思っております。

 取り入れたいことの1つに、「生徒の主体性をいかに育てるか」というテーマがあります。先ほど球技大会のことをお話ししたとおり、学校行事や部活動などにおいて、本校の生徒は十分に主体性を発揮していると感じます。しかし、学習面においては、指示待ちの生徒が多く、学校行事などの場面と比べると、主体的な活動になっていない生徒が少なからずいると感じています。学習面においても、「自ら考え、判断し、決定し、行動する」という主体的な行動を、全ての生徒ができるようにしていきたいと思っております。

 その方策の一つとして、「家庭学習の見直し」があります。家庭での学習は、「自ら考え、判断し、決定し、行動すること」ができて、自分にとって最適な学び方は何か、という「学び方を学ぶ」重要な場面であります。現在、授業を担当する先生方には、生徒の主体性が育成されるよう、週末課題などいわゆる宿題の提示の仕方を検討してください、とお願いいるところであります。

 そこで、皆さんにお願いがあります。御家庭においてお子様の主体性が育成されるよう御支援いただきたいということです。具体的には、お子様が「自ら考え、判断し、決定し、行動できる」よう見守っていただいたいと思います。いつまでたっても勉強しない姿を見ると、どうしても頭ごなしに「勉強しなさい」と言ってしまいがちですが、そこはぐっとこらえて、次の三つの声かけをお願いしたいと思います。まず一言目は、「どうしたの?」と声をかけて、現状をお子様自身に把握させてください。そして、二言目は「どうしたいの?」と声をかけ、お子様自身の意思を確認し、何がしたいかを自分から言わせてください。このように自己決定させることで、自分の行動に責任を持たせることができます。そして最後に、「私は何をしたらいい?」と問いかけて、「決してあなたのことは見放してはいない」「あなたのことを思っている」という見守りの姿勢を示して安心させてあげてください。この「どうしたの?」「どうしたいの?」「私は何をしたらいい?」という三つの声かけにより、自己決定する機会を設けて、主体性を育んでいただきたいと思います。少々御家庭の教育に踏み込むようなことを申し上げ、大変僭越ではありますが、学校と御家庭が一緒になって取り組んでいけるといいなと思っております。お子様のことで、心配な点がありましたら、お気軽にホームルーム担任に御相談ください。

 もう一つお願いがあります。自転車に乗る時のヘルメットの着用です。本校では、今年度から、自転車点検の際にヘルメットを持っているかどうかの確認をしております。法律では、ヘルメット着用は、「努力義務」となっており、必ず着用しなければならないとはしていません。実は、本日、本校の生徒が登校中に自転車での事故がありました。左折する車を避けるために急ブレーキをかけた際に、ひっくりかえってしまい、頭を打ちました。命に別状はありませんでしたが、ヘルメットを着用していなかったため、頭部からかなりの出血があったそうです。事故は、自分がどれだけ気を付けていても起こることがあります。「努力義務」とはいえ、大切な命を守るという観点で、自転車に乗る時のヘルメットの着用について、御家庭で御相談いただけるとありがたいです。

 最後になりますが、これからも、西尾高校の教育活動に対する御理解、御協力を賜りますことをお願いいたしまして、挨拶とさせていただきます。

 本日はよろしくお願い申し上げます。

令和6年度 前期始業式 校長式辞(令和6年4月9日)

 昨日の入学式で、入学を許可した新入生360名も加え、さらに先ほど紹介した新・転任の先生方もそろわれて、令和6年度が本日からいよいよ本格的にスタートしました。

 さて、皆さんに一つ質問をします。皆さん、学習指導要領って聞いたことがありますか?

 学習指導要領は、文部科学省が定めた、学校での学びの基準のことで、各教科の科目の目標や内容を全国統一で定めていて、学校はその科目の中から学ばせたいものを選んで授業を構成しています。これを教育課程と言います。文部科学省は、昭和33年に最初に定めて、以後、その基準を社会の変化に合わせておよそ10年に1回のペースで改訂しています。その7回目の改訂による教育課程が2年前の令和4年度の1年生(今の3年生)から始まりました。その年は、1年生が新基準で、2,3年生が前の基準、そして昨年度は、1、2年生が新基準、3年生が前の基準というように、学年によって基準が違っていました。それが、今年度は、3年目を迎え、3学年全てが新しい基準での学びに切り替わった最初の年ということになります。と言われても、皆さんは前の基準での学びを知らないので、その変化についてピンと来ないかもしれませんが、科目の名前や内容など、比べると大きく変わっています。教える側の先生の立場からすると、この変更への対応はなかなか大変であったと思います。生徒の皆さんに直接関わることとしては、3年生の皆さんが来年の1月に受ける共通テストがあります。今回は、情報のテストが新設されるなど他の教科でも大きく変わります。3年生の皆さんは、すでに承知のことと思います。

 前置きが随分長くなってしまいましたが、大きく変わった点として、皆さんに伝えておきたいことがあります。2、3年生の皆さんは、これまでに聞いたことがあることかもしれませんが、全学年が切り替わった年のスタートとして改めて確認しておきます。

 それは、「主体的・対話的で深い学び」の実現、ということが求められるようになったことです。「主体的・対話的で深い学び」とは、どのような学びでしょうか。やや漠然としているので、もう少し具体的な表現で言い換えてみます。1つ目は「自ら考え、判断し、決定し、行動すること」(まさに主体的な学び、「自ら」というところがとても大切)、2つ目は「多様性を尊重し、対話を通して問題を解決すること」(西尾高校には1070人の生徒がいて一人ひとり違う特性がある。そのことを理解するには対話が必要であり、それぞれの特性を理解して共に問題を解決してほしい)、3つ目は「問題を解決するために知識や情報、技術等を活用し、新たな価値を生み出すこと」(知識を得る(丸暗記)だけでなく、活用できるようになってほしい、そして今どきの言葉で言うとイノベーションを起こしてほしい)。どうですか。どのような学びか、イメージできますか。

 このような学びの実現のために、先生方はさまざまな場面で、さまざまな働きかけをしてくれると思いますが、それを待っているのではなく、授業などの学習活動の場面はもちろんですが、学校行事や部活動、日頃の生活の中でも“自ら”意識して取り組んでいってほしいと思います。

 この1年、生徒一人ひとりが「主体的・対話的で深い学び」を実現し、さまざまな場面で活躍する姿が見られることを楽しみにしています。

 以上、令和6年度前期始業式の式辞といたします。

(令和6年4月9日体育館にて)

令和6年度 PTA入会式 校長挨拶(令和6年4月8日)

 校長の近藤哲史です。お子様の御入学、おめでとうございます。

 私は、この四月に西尾高校に赴任してまいりました。三月までは県の教育委員会に務めておりましたので、学校に戻ってきたのは四年ぶりとなります。この歴史と伝統のある西尾高校に赴任することができ、大変光栄に思っております。今後の西尾高校の一層の発展のため、精一杯努力してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、本校の生徒たちは、PTAの皆様からの、学校祭を始めとする学校行事や部活動への物心両面からのあたたかいバックアップを受けて、明るくのびのびと学校生活を過ごしています。

 また、この三月までの令和五年度は、PTA役員・理事の皆様方の御尽力で、コロナ渦で制限されていた行事が徐々に本来の形に戻り、楽しく積極的にPTA活動がすすめてこられたと聞いております。新入会員の皆様も、可能な限りPTA活動に積極的に関わっていただくようお願い申しあげます。

 それでは、この場をお借りして、二点お話しさせていただきます。

 一点目は、本校における教育方針についてです。先日の職員会議で、今春の大学進学状況について報告があり、国公立大学への合格者が217名出たとのことでした。200名を超えたのは、18年ぶりだそうです。この数字を紹介したのは、単に数の多さを喜んでいるからではなく、生徒たちが求める学びのあり方に先生方がきちんと応え、支援したことが、このような結果に表れたのだということをお伝えしたかったからです。本校の教育で大切にしたいことは、入学式の式辞でもお話しましたが、一言で言うと、「主体性の育成」です。

 具体的には、「自ら考え、判断し、決定し、行動すること」「多様性を尊重し、対話を通して問題を解決すること」「問題を解決するために知識や情報、技術等を活用し、新たな価値を生み出すこと」という三つができることです。なるべく教えること、指示することを控え、生徒自らが考え、判断し、自己決定、自己解決できるよう、さまざまな場面を設定してサポートしていきたいと考えております。

 そこで皆様にお願いですが、ご家庭でもお子様が自己決定、自己解決できるようご支援いただきたいと思います。例えば、全然勉強しなくて注意したいという場面があったとします。そんなときはどうしても感情的になってしまいますが、ぐっとこらえて、まずは「どうしたの?」とシンプルに現状を聞き、「どうしたいの?」と意思確認をして、「私は何をしたらいい?」という問いかけを行い、「決してあなたのことは見放してはいない」「あなたのことを思っている」というメッセージを送ります。このような問いかけを行うと、子供は自分で考えなければならなくなります。何かあったときには、この「どうしたの?」「どうしたいの?」「私は何をしたらいい?」という三つのセリフにより、自己決定する機会を設けて、主体性を育んでいただきたいと思います。学校とご家庭が一緒になって取り組んでいけるよう御協力をお願いします。

 二点目です。皆さんすでにご存じと思いますが、本校は、令和八年度に附属中学校を新設し、中高一貫校となります。皆さんのお子様が高校三年生になるときに、中学一年生が入学することになります。現在、開設に向けてさまざまな準備を行っており、来年度あたりから、新たな施設の建設工事が始まる予定です。工事が始まるとやや窮屈な思いをすることがあると思いますが、極力、在校生の学びの妨げにならないように配慮してまいります。また、三年生になったときには、学校行事などで中学生との交流の場面があると思いますが、高校生にとってもよい刺激となるような活動にしていきたいと考えております。中高一貫校のことについては、今後も必要に応じて情報をお伝えする予定です。

 これから三年間、西尾高校の教育活動に対する御理解、御協力を賜りますことをお願いしまして、少し長くなりましたが挨拶とさせていただきます。

 ありがとうございました。

(令和六年四月八日 体育館にて)

令和6年度 入学式 校長式辞 (令和6年4月8日)

 おだやかな風に校庭の木々も芽吹きはじめ、新入生の皆さんを迎えるにふさわしい佳き日となりました。

 本日、令和六年度愛知県立西尾高等学校入学式を挙行いたしましたところ、PTA会長・横山博様をはじめとするPTA正副会長の皆様、並びに新入生の保護者の皆様方の御臨席を賜りました。高いところからではありますが、御礼を申しあげます。誠に、ありがとうございます。

 ただ今、入学を許可しました三百六十名の新入生の皆さん、創立百六年の輝かしい歴史と伝統のある西尾高校へようこそ。教職員・在校生徒を代表し、心から歓迎いたします。

 また、こうして入学の時を迎えた、新入生の喜びの大きさもさることながら、本日までわが子の健康と幸せを願いながら、お子様を育くんで来られた保護者の皆様の喜びもひとしおのことと拝察いたします。心よりお祝い申しあげます。

 さて、この西尾高校には、「生徒指導上の規則」というものがあります。入学のしおりに載っているので、すでに読んだ人もいるかもしれませんが、いわゆる校則です。この生徒指導上の規則は、令和四年度に生徒が主体となって、先生と相談しながらつくられたもので、先生から一方的に与えられたものではありません。そして、この規則には、生徒からの希望で「前文」がついています。それを今から読み上げます。

 「前文」【生徒会からの本規則に対する理念】

 本規則は生徒が健全で秩序ある学校生活を送るためにあり、校訓の進取・自主・克己の精神を受け継ぐものである。また、今後も必要があれば生徒・教職員の相互信頼をもって見直しをしていくものとする。とあり、続いて校訓である進取・自主・克己という三つの言葉の生徒たちが考えた解釈がついています。これも読み上げます。

 進取とは、自ら進んで課題を見つけ、社会に目を向けて多様な考えを取り入れながら解決すること。自主とは、西尾高校という私たちの社会を過ごしやすいものにするため、自主的に物事を考えること。克己とは、学校は全ての生徒が関わる公共の場であることを踏まえ、自らを律すること。とあります。大変すばらしい解釈であると私は感じています。というのは、この三つの解釈には、将来の予測が難しいと言われている日本の社会を生き抜くために必要とされる資質・能力がうたわれているからです。予測困難な社会とは、生産年齢人口の減少やグローバル化の進展、絶え間ない技術革新などにより、社会構造や雇用環境が急速に変化することです。そのような中で生きていくには、社会の変化に主体的に関わり、「どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのか」という目的を自ら考え、よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要であると言われています。

 新入生の皆さん、西尾高校での三年間、先輩たちがつくってくれた生徒指導上の規則、特に前文の三つの校訓の解釈を、心のまん中に常に置いて学校生活を送ってください。そうすれば、自然とこれからの社会で生きていくための力が身に付いているはずです。これからの皆さんの活躍を楽しみにしています。

 保護者の皆様、今日から大切なお子様をお預かりし、教職員一同、心を込めてお子様を鍛え、成長させてまいります。そのためには、本校の教育活動に対する保護者の皆様の御理解と御協力を欠かすことができません。今後とも本校の教育活動に御支援を賜わりますよう、お願い申しあげます。

 結びに、皆さんが充実した西高生活を送り、自分の進路目標を達成して笑顔で卒業することを願い、式辞といたします。

令和六年四月八日             

愛知県立西尾高等学校長  近藤哲史