校長室より

鈴木雅文


校 長  鈴 木  雅 文
 朝、矢作川の川面を吹き渡る風はいまだ冷たく、凜とした空気がみなぎりますが、それでも日ごとに強くなる陽の光に、少しずつ春の訪れを感じる弥生、3月になりました。
 本日、このよき日に、PTA会長・手嶋和樹様をはじめ、御来賓の皆様、保護者の皆様の御臨席を賜り、愛知県立西尾高等学校第73回卒業証書授与式を挙行できますことは、この上ない喜びであり、高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。
 ただいま、卒業証書を授与しました350名の皆さん、卒業おめでとう。
 君たちは3年前、西尾高等女学校時代から続く、歴史と伝統に彩られた本校百年目の入学生として西高の門をくぐりました。1年生の時には、創立百周年記念事業に在校生として主体的に参加し、新たな伝統の1ページを刻んでくれました。その後も日々、校訓「進取、自主、克己」の精神に立って、学習、部活動、生徒会活動、学校行事などに積極的に取り組むことで、かけがえのない青春の日々を充実させ、本日、晴れて卒業の日を迎えたのであります。
 とはいえ、この3年間の道のりは、君たちにとって決して平たんなものではなかったことと推察します。1年前、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、例のない長期にわたる臨時休業、インターハイ予選の中止、夏季休業の大幅短縮、学校行事の中止、縮小など、最終学年を迎えた君たちの学校生活は激変してしまいました。さらに、初年度となる大学入学共通テストについても、英語の民間試験活用及び国語・数学における記述式問題の見送りなど、突然制度が変更されて、準備を進めてきた君たちは、大いに困惑させられたことでしょう。しかし、それらの苦境を乗り越え、今ここに集う君たちの希望に満ちた表情を見るにつけ、今後の君たちの幸せと成功を祈らずにはおれません。
 さて、コロナ禍は、私たちに多くのことを気づかせました。例えば、
 ・これまで当たり前だった、人と人とが対面して会話することに、時として制限がかかること
 ・国境が封鎖されることで、貿易を主軸とするサプライチェーンは、時として機能不全に陥ること
 人類には幾度となく、地球規模のパンデミックを克服してきた歴史があります。したがって、コロナ禍が収束するアフターコロナの時代は必ずやってきます。そして、アフターコロナの社会では、次の二点が求められることになるでしょう。
 1点目は、オンライン化された使い勝手のよいバーチャル空間を作ることで、感染症を予防しつつ、ストレスなく日常生活を過ごすことができること。
 2点目は、例えば、輸入に依存している石油などの化石燃料から得ているエネルギーを、太陽光などの再生可能エネルギーに転換を進めることで、エネルギー供給が国内で完結するサプライチェーンを作り、感染症拡大などの非常事態でも社会経済活動を止めないこと。
 このような社会の実現のためには、様々な分野で新たな視点からイノベーションが求められ、これから君たちは、それぞれの立場でその実現に取り組む必要があるのです。
 そのためには、どんな資質が必要になるでしょうか。
 私は1980年代に学生時代を過ごしました。当時、我が国の経済は安定成長期にあり、終身雇用制は守られていて、いわゆる「いい」大学を卒業して、「いい」企業に入社すれば、老後までの生活設計は簡単に描けた時代でした。いわばレールが敷かれていて、レールに乗る、つまり電車に乗りさえすれば、目的地に確実にたどり着いたのです。
 しかし、現在は不確実性の時代です。大学を出る、就職する、定年まで勤め上げる、安心の老後が待っている、とは必ずしも言えない。いわばレールが敷かれていない時代になったといえるでしょう。したがって、アフターコロナの時代をリードしていく君たちには、車のドライバーたる資質が求められるのです。
 車は、電車とは違い、乗りさえすれば目的地に到着するものではありません。自分で目的地までの走行プランを立て、自分の判断で速度を上げたり落としたり、停まったりと、すべて自分で判断する必要があります。私は、車を操るがごとく、自分の人生の目的地に自分の判断で向かう力をもつことが、アフターコロナの時代をしなやかに生き抜く資質だと考えます。
 西高で学び、考えた3年間、自分が培ってきた力をもとにして、次のステップでも大いに自分を磨いてください。これからの君たちの活躍を心から期待しています。
 最後になりましたが、保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。たくましく成長したお子様の姿に、感慨もひとしおのことと存じます。また、これまでの本校の教育活動に寄せられました、皆様の深い御理解と御支援に対しまして、厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 母校を巣立ちゆく卒業生350名の、洋々たる前途に幸多からんことを祈念し、式辞といたします。
令和3年3月2日             
愛知県立西尾高等学校長  鈴木雅文
 みなさん、あけましておめでとうございます。冬休みもあっという間に終わり、3年生は大学入学共通テストまであと10日を切りました。自分を信じてよい結果を残すことができるよう期待しています。
 さて、みなさんは「自己有用感」という言葉を聞いたことはありますか。私は君たちを見ていて、この言葉が西高生のキーワードの一つだと最近思うようになりました。自己有用感とは何か。ざっくり言えば、「自分が誰かの役に立っている!」と思う感覚です。
 よく似た言葉に「自己肯定感」という言葉がありますが、自己有用感とは少し違います。自己肯定感は「自分には価値があると思う感覚」であり、自分の自分自身に対する評価です。人間は自分に甘い傾向があるので、自己肯定感は時として自分に対する過大評価になりがちなので注意が必要です。しかし、自己有用感は「他人が自分を評価してくれていると思う感覚」、つまり他人の自分に対する評価なので、過大評価される可能性は低いと言えます。
 では、自己有用感を高め、自分に自信をもつことができるようにするための具体的方法を二つ話します。
 一つ目は、とにかく「おかげさまです」、「ありがとうございます」と、人に感謝する姿勢をもつことです。
 自分が他の役に立っていると感じられない人、イコール自己有用感の低い人は、他人が自分に何かしてくれても、他人に感謝しないという特徴があるそうです。なぜか。それは、他人が自分のためにしてくれることを「してもらって当たり前」、当然だと受け止めるから、逆に自分が他人に何かをしても感謝されるとは思いもしないからです。
 例えば、親に食事の用意をしてもらっている。このことが当たり前だ、と思うとすれば、親への感謝の気持ちがわくでしょうか? ありがたいという感謝の言葉は文字どおり「ありがたし」、つまりあるのが難しいことです。当たり前のように受け止めたら、あるのが難しいことイコール「ありがたい」こととして感謝の言葉は決して出ないでしょう。
 「ありがとう」は魔法の言葉。他人からしてもらったら「ありがとう」と感謝の念をもつこと、これが一つです。
 二つ目は、自己有用感は「自分が誰かの役に立っている!」と思う感覚だから、人の役に立つ場面をつくること。率先して家庭の役割を果たしたり、クラスや生徒会、部活動の様々な役割を引き受けたり、ボランティア活動に積極的に参加したりすれば、見ている人は見ていてくれますから、自分が役に立っていると意識できる機会も増えると思います。
 自分の存在に自信がもてないでいる西高生、君たちの潜在能力はそんなものではありません。もともとポテンシャルの高い生徒集団ですから、その一人一人が自己有用感で満たされることになれば、西高はさらに素晴らしい学校として躍進することができると思います。
 人への感謝の心、人の役に立つ場面。西高が新たな年に向かってスタートした節目の今日、どうか意識してみてください。
 以上で3学期始業式の式辞とします。
 8月24日の始業式から始まり、おそらく西尾高校で史上最も長かったであろう2学期が、122日を経て本日終了します。この間、私たちは新型コロナウイルス感染症拡大の第2波のピークを経て、11月から現在に至るまで、第3波の真っただ中にいます。いまさら言うまでもありませんが、この状況ではだれにとっても感染リスクをゼロにすることは難しい。引き続き基本的な感染症対策、すなわち、「3密(密閉・密集・密接)」を防ぐこと、マスクの着用、手洗い、消毒、換気の徹底、大声を出す行動やマスクなし会食の自粛などを行っていく必要があります。年末年始の休暇が控えており、気持ちも緩みがちになりますが、この年末年始は静かに過ごしましょう。
 さて、みなさんは10月に「学校生活評価アンケート」をしたことを覚えていますか。「西高は、学校の雰囲気がよい」から始まり、「私は、西高生としての誇りをもっている」まで、全30問に、「とても」「だいたい」の肯定的回答、「あまり」「まったく」の否定的回答の4択で回答してもらうものです。結果を見ると、ほぼ全ての項目で肯定的回答が多く、西高生の集団としての精神健康度はまずは良好であるということができそうです。
 しかし、その中で気になる項目が一つありました。それは、「私は、自分から進んであいさつができている」という項目への回答です。生徒全体で「とても」「だいたい」という肯定的回答は78%。これが高い数字なのかどうかはわかりませんが、逆に見ると西高生5人に1人は自主的にあいさつができていないことになります。
 更に気になる点として、学年別にみると肯定的回答は1年生が85%、2年生が75%、そして3年生は73%と、学年が進むにつれて自主的にあいさつができる生徒の割合が減ってくることが挙げられます。年齢が進むと恥ずかしいのか、屈託なくあいさつを交わすことをしなくなるとは、何とも残念なことです。人間は社会的な動物です。他人の存在なしには生活していくことはできません。そのためには他人との社会的関係をうまく作っていく必要があり、その潤滑油があいさつです。
 今月12日に発表された今年の漢字は「密」、また、流行語大賞は「3密」。これらの「密」は、「密にならないように」という否定的なニュアンスでソーシャルディスタンスの確保を呼びかけたものですが、そういう状況であるからこそ、「心のディスタンス」は「密」にしたいものです。積極的にあいさつを交わすことはその手っ取り早い方法の一つだと思います。まずは進んであいさつをして、心の距離は密を保ちましょう。
 新型コロナウイルス感染症の発生が知られてから丸1年。海外ではワクチン接種が始まったという明るい話題から、更に感染力の高い変異株が発見されたという暗い話題まで、各種報道があふれています。私たちは報道に振り回されることなく、落ち着いて自分でできること、するべきことにしっかり取り組んでいきましょう。
 新しい年が西高に関係するすべての皆さんに希望をもたらすものであることを願って、2学期終業式の式辞とします。
 10月31日(土)、本校の登山部の秋山山行の日程に合わせておよそ10年ぶりに鈴鹿山脈・釈迦ケ岳山域に足を運びました。新名神高速道路が開通し、インターチェンジから登山口の駐車場までわずか15分という、夢のような交通の便の良さでびっくりしてしまいました。
 登山部の顧問・生徒は公共交通機関でやってくるので、自家用車で早着した私にはかなりの時間的余裕がありました。そこで、ただ漫然と待っていても仕方ないと思い、先に一本登ろうか、ということで目立たないけれど展望が素晴らしい水晶岳を目指すことにしました。
 絶好の天気に恵まれ、ところどころ見事な紅葉を楽しみながら、軽快なピッチで歩を進めました。途中の根の平峠は三重県と滋賀県の県境にある峠で、古くから伊勢と近江を結ぶ千草越街道の要衝として知られ、あの織田信長が鉄砲で狙撃(未遂でしたが)されたポイントとしても有名です。
 そこから登り始めがやや急な県境の尾根を歩き、傾斜がきつい三重県側、緩い滋賀県側の地形を観察しながら、標高954mの水晶岳に到着。鈴鹿中部の山並みの眺めが素晴らしいこの山頂、ガラケーで写真を撮って一息つきました。(ここでとんでもないことをしでかしてしまうのですが、このことは当分の間、内緒です。)
 しばし休んだのち、出発。絶好の天気に恵まれ、遠く南アルプスの塩見岳、荒川岳、赤石岳、聖(ひじり)岳(日本最南端の標高3000m超の山です)が一望できて感激しました。中峠から県境尾根を外れて三重県側にルートをとり、足元が悪く、濡れた岩が滑る、しかも急傾斜でところどころ崩落している伏木谷を降りました。「急傾斜=歩行距離は短い」ので、登山部と合流するための最短ルートを選んだということです。その後、無事登山部のメンバーと合流し、ささやかな山行を結ぶことができました。
 「登山」というと、ハード、疲れる、中にはトンデモナイと拒否反応を示す人もいますが(私の妻はこの部類です)、自分の足で一歩ずつ踏みしめて頂に到達したときの達成感、充実感、御褒美として得られる申し分ない眺望は経験しないことにはわかりません。久しぶりの登山は本当にいいリフレッシュの機会になりました。
 さて、現在愛知県内高校の登山部はどれほどの規模で活動しているか、その概要を記しておきます。
 11月7日(土)、立冬の雨降り、県東部の本宮山を舞台に今年度高校新人体育大会登山競技が開催されました。参加チームは男子11校18チーム、女子8校12チーム、1チームは4人編成なので、男子72人、女子48人、合計120人の高校生が出場したことになります。この人数をまずまずいると捉えるか、昨今の山ブームの割には少ないとみるかは分かれるところですが、私は山に関心をもつ高校生は少しずつ増えているという印象をもっています。
 登山は自分のペースで取り組むことができる生涯スポーツです。もっと多くの高校生に登山の魅力を伝えていけたらいいなぁと、高体連登山専門部長の立場からも思っています。
 このところ、連日の猛暑日で、心身ともに疲労がたまってきていることと思います。しかし、気がつけば朝晩は草むらから虫の声が聞こえるようになり、また、日の出の時間は遅く、日の入りの時間は早くなりつつあります。私たちの周りでは、気候以外の部分では確実に季節は巡って、秋の気配があちこちに感じられるようになりました。
さて、前例のない短い夏休みが終わり、今日から2学期が始まります。西高における2学期早々のビッグイベントが学校祭です。今年は新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、一般公開である西高祭をやむなく中止に、また、例年2日間で実施している文化祭と体育祭を、体育祭をメインして、その中に文化祭の要素を取り入れながら1日で実施することとしました。
生徒諸君に存分に学校行事に取り組んでもらい、西高生のパワーを見せつけてもらいたいと思っていただけに私も残念でなりません。しかしかくなる上は、各自に与えられた舞台の上で、精一杯ベストを尽くしたパフォーマンスを見せてくれることを願っています。明日から生徒全員による学校祭準備期間に入ります。熱中症とコロナ対策を怠ることなく、団の仲間たちと協力し、計画的に準備を進めていってください。
最初に、秋の気配が感じられるようになった、と述べました。秋の気配が感じられるようになると、焦りを感じだすのは今も昔も大学進学を目指す全国の高校3年生です。とりわけ今年は3月から5月いっぱいに及ぶ前代未聞の臨時休業もあって、焦りもひときわだと思います。
なぜ焦るのか、それはきっと「自分はこの夏の間に実力をつけて、秋から更にステップアップできる」と思い込むから、それが空回りした時に「そんなはずはない、どうしよう」となる。言い換えると、「こうであらねばならない自分」に縛られるあまり、「こうであらねばならない自分」が実現できない時に焦るということです。「こうであらねばならない自分」にこだわり、執着する人を「ねばねば星人」とよびますが、西高生は「ねばねば星人」が少し多いかな、と私は感じるぐらい、ちょっと西高に慣れてきました。
「じゃあどうすればいい?」と思った人にアドバイス。キーワードは「しなやか」。「しなやか」のイメージは例えると柳です。「柳に雪折れなし」ということわざを知っている人はいますか。これは「柔らかくしなやかなものは、意外にも堅いものより丈夫」という意味で、さらに広げて「人生において何らかの壁にぶつかったとき、柔軟な心持ちでいることでうまく対応できる」という意味も成します。
「ねばねば星人」は「ねばならない」と固く、一途に思いがちですが、ここは柳のようにしなやかに、物事は「こうであるにこしたことはない」程度に柔軟に捉えたらよいのではないでしょうかね。焦っている3年生だけでなく、1、2年生も何か行き詰まりを感じたら「ねば」じゃなく「こしたことはない」とものの捉え方を変えてみると目の前が開けることがあると思います。試してみてください。
 以上、2学期始業式の式辞とします。
 長かったような、短かったような、不思議な、不思議な1学期が本日終業式を迎えました。
 先日梅雨も明け、本格的に熱中症対策に取り組んでもらう必要があります。熱中症は、直ちに命の危険を招くこともあることを強く認識して、熱中症情報に注意し、休憩をとるとともにこまめな水分補給などを心がけ、適切な行動をとるように心がけてください。
 さて、新型コロナウイルス感染症は、愛知県内でも1日100名を超える感染者が連日報告されており、この状況ではだれにとっても感染リスクをゼロにすることは難しいと、残念ながら言わざるを得ません。引き続き基本的な感染症対策、すなわち、「3つの密(密閉・密集・密接)」を防ぐこと、マスクの着用、手洗い、消毒、換気の徹底、大声を出す行動の自粛などを行っていく必要があります。西高がこれからも安心・安全な教育活動の場であり続けるためにも、みなさんの協力をお願いします。
 今日じっくりと話したいことはこれからです。
 新型コロナウイルス感染症が拡大している現状やウイルスに対する正しい知識が不足していることなどから、過度に不安や恐れを抱いてしまい、それがもとで「不正確なうわさやデマ」、「偏見」、「差別」が発生することがあります。特に感染者やその家族、最前線でウイルスと闘う医療従事者、物流を支える運送業者などに対する差別やいじめが社会問題化しています。
 例えば、感染者の家に石が投げ込まれたりとか、看護師さんの子供が通っている保育園の別の保護者から「看護師の子供は通わせないで」と申し入れがあったりとか、宅配業者の配達員が、荷物の届け先のマンションの部屋のドアを開いたとたんに「コロナを運ぶな」と除菌スプレーをかけられたりとか、枚挙にいとまがありません。
 日本サッカー協会理事で元サッカー日本代表の北澤豪(きたざわ つよし)さんは、自身のユーチューブに次のようなメッセージをあげています。「闘う相手はコロナです。人ではありません。我々みんな、いつ感染してもおかしくありません。感染した人たちを差別するのは間違っていると思います。」
 しかし、私には、コロナが原因で誹謗・中傷の矢面に立たされ、いじめや差別の被害にあっている人たちにとっては、闘う相手はコロナではなく、むしろ人の方ではないかと思えてしまうのです。
 また、臨床心理士の森光玲雄(もりみつ れお)さんは、「感染したくない、そう誰しもが思います。だからこそ、私たちの誰もがついつい、感染者を遠ざけたり、差別してしまったりする可能性があります。ウイルスそのものは差別をしません。私たちの過度に恐れ、遠ざけようとする心が、差別の根につながっていくこと。そして、その大人の姿を今の子供たちの一人一人が認識しておく必要があります。感染した人や、周囲で働いている人たちに対して、差別ではなく、ねぎらいの言葉とエールを送り、ともにこの危機に立ち向かっていきましょう」というメッセージを「STОP!コロナ差別キャンペーン」に寄せています。
 繰り返しますが、現在の地域の感染状況を見ると、だれにとっても感染リスクをゼロにすることが難しい状況にある、すなわち、この放送を聞いている誰もが感染者になる可能性があるのです。自分がそうなった場合、差別ではなく、エールを送ってくれる社会だったら、どんなにか勇気付けられると思いませんか。
 新型コロナウイルス感染症の拡大は、人類にとって生命にかかわる試練、経済活動にかかわる試練であるとともに、我々の人間性が試されているテストのような気がしてなりません。西高生は、このテストでまさか赤点をとることはないと信じています。  短い夏休みではありますが、健康に留意し、少しでも自分が成長できるよう、校訓の「自主」「克己」の精神で過ごしてください。
 以上、1学期終業式の式辞とします。
  皆私が4月1日に着任して、はじめにもらった西高の年間行事計画では、本日が一学期終業式のはずでした。しかし、臨時休校等が長引き、西高では今年度一学期終業式は8月5日に予定しています。途中4連休を挟むとはいえ、あと2週間あります。
生徒諸君にとって、小学校以来おそらく初めての体験でしょう。私も教員生活35年になりますが、初めてです。生徒・教員等の学校関係者は、長年の習性から、年間の行動パターンが「7月下旬からは夏休みモード」に切り替わってしまうため、この2週間が精神的にも身体的にもしんどい状況にならねばいいがなあ、と若干心配しています。どうか心身のバランスをコントロールしながら、日々を過ごしてもらいたいものです。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が、愛知県でも心配される状況になってきました。特に、4月、5月の状況と違うのは、気温や湿度の状況から現在の方がより熱中症対策を求められるということです。「3つの密(密閉・密集・密接)」を防ぎながら、マスクを着用し、こまめに消毒を行う、という、感染対策のイロハを実践しつつも、特にマスクの着脱については、熱中症対策も踏まえて対応していく必要があります。
具体的には、学校生活において原則マスクは着用するが、熱中症の予防のため、生徒や教員がマスクを外すこともあり得ます。その場合、例えば授業中の生徒は、不必要な発声を控え、発声の必要がある場合はマスクを着用すること、咳エチケットを徹底すること。授業中以外では他人との身体的距離を確保し、近距離での会話は控えること、等が求められます。熱中症は直ちに命の危険に直結することがあります。「マスクの着脱の判断に先んじて熱中症対策をとる」ことが大切です。
話はガラッと変わって、私は長距離ウォーキング(1日20~40キロ程度歩きます)を趣味の一つにしています。特に、新型コロナウイルス感染症拡大で、もう一つの趣味である鉄道旅行が難しくなったことから、せっせと近場を歩いています。
先日も、久々の梅雨の晴れ間に西尾の城下町と安城の桜井地区を歩き回りました。その途上、とある歴史ある寺院の門のところに次のような言葉がしたためられていました。
なるほどなあ、と思いました。自分にはそう言ってくれる人はいない、と思っている人、たぶんまだそういう人に巡り合っていないだけですよ。そう言ってくれる人との出会いを楽しみに。
 
命は大切だ。命を大切に。
そんなこと何千何万回言われるより
「あなたが大切だ」
誰かがそう言ってくれたら
それだけで生きていける。
  皆さん、こんにちは。校長の鈴木です。臨時休校期間が終わり、6月1日までは分散登校による半日授業の形ではありますが、ようやく今年度の学校活動が始まりました。とはいえ、1学期中間考査の実施見送り、期末考査は時期を遅らせて実施することや、夏季休業の短縮、また、学校祭をはじめとした年間行事計画の見直しをせざるを得ない状況にあります。今後、通常の授業が再開されたところで、年間行事計画を伝えていくことができればと思っています。
 当然わかっていることとは思いますが、緊急事態宣言が解除されたからと言って、新型コロナウイルス感染症が収束したとは言えません。第一、効果的な治療薬やワクチンが開発されていない現状では、感染拡大の第二波、第三波がいつ襲ってきてもおかしくありません。
 そのなかで、皆さんが安心・安全に学校生活を過ごすためには、「新しい生活様式」を学校でもつくる必要があり、そのためには皆さんの協力が不可欠になります。本日、授業前のSTで、「学校再開にあたってのお願い」というタイトルのプリントを配りました。具体的には「健康管理と衛生行動の徹底」、「感染症に必要以上の不安や怖れをもたないこと」、「みんなで感染症を乗り越えること」をお願いしています。
 特に「健康管理と衛生行動の徹底」について、毎朝の検温、マスクの着用、手洗いの励行などの基本的なことがらの実践は言うまでもなく、それ以上に学校生活の中で今までにはなかった行動様式をとることを皆さんにお願いしていきます。例えば、「個人が出したゴミはすべて持ち帰る」こと。そのために教室からごみ箱は撤去しています。また、ごみの持ち帰りのためには家庭からごみを入れる袋を持参してもらう必要があります。そして何よりも、「ゴミ箱がないから校内の目立たない場所にポイ捨てする」などの行為があってはなりません。君たちの協力が絶対に必要です。
 また、身体的距離の確保するために、昼休みの購買の利用方法、部活動の練習方法などなど、今まで想像もしなかった行動様式をお願いすることが多くなると思います。ストレスがたまる状況に違いませんが、感染症をみんなで乗り切るために、感染症予防に対する意識を高めてください。
 さて、3年生諸君。上級学校にステップアップする時期は来年4月と現時点では決まっており、その準備に充てることができる時間はどんどん限られてきます。「焦るな」と言われても、不安になりますね。しかし、このような状況下においても大切なことは、「自分を見失わず、自分がすべきことを日々確実に積み上げる」ことです。今後、どのような状況が起きようと、校訓のうち、「克己(こっき)」の精神で自分に打ち勝ち、平常心でことにあたってくれることを希望します。
 先ほども言いましたが、確実な治療薬やワクチンが開発されていない現状では、また感染が拡大して、再び学校が臨時休業になる可能性もあります。その場合でもこれ以上、皆さんの学習活動を滞らせるわけにはいきません。
 そこで、来月から「スタディ・サプリ」や「ロイロ・ノート」といった民間のオンライン学習支援サービスを導入する予定です。今後、これらのアプリを用いて、安心して学習支援を進めるために、通信機器環境調査などの準備が必要なので、調査があったら協力をお願いします。
 最後に、前代未聞の形で令和2年度はスタートしました。したがって、多くの生徒が不安や焦りを抱えていることと思います。これから始まる学校生活の中で、感染症だけでなく、少しでも心配なことや不安なことがあれば、皆さん一人一人が話しやすい先生でかまわないので、自分でため込んでいないで、ぜひ相談してみてください。また、特に1年生は、まだ慣れない通学ルートです。交通安全には十分留意して登下校してください。
 少し長くなりましたが、以上で1学期始業式式辞に代わる話とします。
 「令和2年4月、5月=「未知との遭遇」」のタイトルで筆を進めた4月30日の文章の中で、私は「4月の授業日数は、わずか1日。そして、5月の授業日数は0日!私は教職に就いて35年目になりますが、全く経験したことのない、それこそ「未知との遭遇」の2か月になります。」と記しました。
 5月18日現在、愛知県立学校は、分散登校の形をとりながらも、5月25日から授業を再開することになり、5月の授業日数がゼロというそれこそ未知の事態は避けられました(と、いうことは、25日以降は欠席・遅刻・早退がカウントされるということですよ)。
 しかし、今週は学校再開準備期間。授業はまだありません。その代わり、私は先生方にこの期間で必ず個人面談を実施してくださいとお願いしました。新学期が始まってかれこれ2か月近くが経過するのに、担任の先生と満足に話すらしていない状態では、学校が再開されてもスムーズに学校生活が回っていかないのではないかと危惧したからです。特に3年生は進路に向けた具体的な相談も必要でしょう。また1年生は、そもそも「登校することに慣れる」段階から始めなければならず、大きなストレスを抱えていると想像できることから面談は重要になります。個人面談の機会をしっかり活用してください。
 来週からは各学年ともにクラスを午前・午後に分けて1クラス20人程度で「3密」を避けた形で授業を開始します。臨時休業で生活リズムが乱れてしまった人、当初の予定より授業開始が早くなって、課題が追い付いていない人、今週中に何とかしてください。早く「授業や部活動が普通にある学校生活」に戻るためには、早めに適応体制を作ることが大事です。
 さて、先週新聞報道されたとおり、愛知県は高校におけるオンライン学習支援の一環として「スタディ・サプリ」の6月からの導入を決定しました。今後はこれらを活用することで、万一感染流行の第2波が襲来して再び臨時休校措置がとられることがあっても、家庭での学習活動をスムーズにサポートすることができるようになります。オンライン学習支援システムの具体については追って説明しますが、それを使いこなすことが求められる時代が確実にやってきます。
 本校は6月2日から通常に戻ります。部活動も久しぶりに再会します。1年生は初めて先輩・同輩と顔を合わせることになります。不安の中でも新たな出会いを楽しみに、いましばらく感染症対策を十分とって日々を大切に過ごしてください。
 令和2年4月の授業日数は、わずか1日。そして、5月の授業日数は0日!私は教職に就いて35年目になりますが、全く経験したことのない、それこそ「未知との遭遇」の2か月になります。今、西高では、他校とも情報交換しながら、また、これまで本校で教育活動を積み上げてきた教職員のノウハウをもって、令和2年度の年間行事計画の変更や臨時休業中の対応について、検討を進めています。
 新入生は、希望と期待を胸に高校生活をスタートさせようと思っていたところ、まさに出ばなをくじかれた思いでいっぱいでしょう。かくいう私も転勤してきて、さあこれから頑張るぞ、というところで停滞を余儀なくされているわけですからその気持ちはよくわかります。
 2年生は、楽しみにしていた修学旅行が1月に延期になりました。例年とは異なる寒くてしかも日の短い季節に九州を訪れることになるため、若干の日程変更などもありうるかもしれません。また、夏休みに実施してきたオーストラリア語学研修も州政府から受け入れができない旨通知があり、これも中止せざるを得なくなりました。
 さらに、3年生は自分の進路目標に向けてスタートダッシュをかけようと思っていた矢先の突然の学校ストップ。さらに、運動系の部活動に所属していた諸君はインターハイ中止(ということは、地区大会、県大会、東海大会も中止)に伴い、最後の活躍の場面を与えられないまま、部活動にピリオドを打つことになってしまいました。無念の思いは察するに余りあります。
 新型コロナウイルス感染症のまん延に伴う臨時休業は、西高の教育活動全体に計り知れないダメージを与えています。しかし、こんな時だからこそ生徒諸君には、自分を見失うことなく、冷静に対処してもらいたい。まずは、学校があるときと同じように決まった時間に起床し、規則正しい生活を過ごすこと。どうしても気が抜けてしまう人は、8時25分から終業時の時間まで在宅であっても西高の制服を着用して過ごすことが大変効果的です。自分に流されやすい、そんな自分を何とかしたいと思っている人は「在宅制服着用」を試してみてください。
 学校も、ホームページを通じて課題の指示をしたり、オンライン学習の手立てを進める準備に取り掛かったりしています。また、進路相談が必要な生徒については「三密」を避けるために時間をずらして個別に登校して、進路面談も行っています。
 愛知県立学校は、学校再開日予定日を6月1日(月)としています。5月中旬からはその準備として必要最小限の登校日を設ける予定でいます。臨時休業で不安、心細さ、焦りなどなど、さまざまな思いが巡ると思いますが、みんな同じ状況で頑張っています。そのことを心の支えにして、もうしばらく自分を見失わないように、少しずつでもいいから歩を前に進めましょう。
愛知県立西尾高等学校長  鈴木雅文
 本日、令和2年度愛知県立西尾高等学校入学式を挙行いたしましたところ、大変御多用の中をPTA会長・宮地俊之様、同副会長石川弘美様、手嶋和樹様並びに新入生の保護者の皆様方の御臨席を賜りましたことを、本校を代表し、厚く御礼申し上げます。
 入学生の皆さんの喜びの大きさもさることながら、本日まで御苦労を重ねてお子様を育てていただいた保護者の皆様の喜びもひとしおのことと拝察いたします。衷心よりお祝い申し上げます。
 只今、入学を許可しました360名の新入生の皆さん、本校への御入学おめでとうございます。創立百有余年の輝かしい歴史と伝統に彩られた、県立西尾高等学校へ、ようこそ。心から歓迎いたします。
 皆さんの高校生活のスタートである本日、皆さんにお話したいことがあります。それは、「二つの大切にしてほしいこと」についてです。
 一つ目は、「出会い」です。今日から新しいクラスメイト、先生、先輩、地域の方々をはじめとする様々な人と出会うことになります。中学時代より行動の範囲が広がりますから、出会いの幅も広がります。
 人間は社会的な存在です。他人とのかかわりなくして生きていくことはできません。多くの人との関係性をもつためには、目の前にいる他人との出会いを大切に積み上げていくことが求められます。
 まずは、「はじめまして」、から始まるあいさつを交わしてみましょう。そのあいさつを交わした人が、ひょっとしたらあなたの人生にとってかけがえのない存在になることだってあるでしょう。
 「出会い」を大切にしてください。
 二つ目は、「自分」です。「自分を大切にしなさい」といっても、自分のことばかりを優先させて行動する、自己中心的な人間になれ、と言っているのではありません。
 人生は順風満帆な時ばかりではありません。時にはうまくいかなくて、悩んだり、落ち込んだりすることもあるでしょう。
 そんな時、「どうせ自分はダメなんだ」と自分を否定的に捉えることはやめて、自分を生かすためにはどうすればよいを前向きに考えることによって、自分という存在は救われる、すなわち「自分を大切に」できることになります。「自分を大切にする」ということは、苦境に陥った時でもポジティブに思考するために効果を発揮します。ぜひ心にとめておいてください。
 「出会いを大切に」そして「自分を大切に」、これからの高校生活を過ごしてください。
 保護者の皆様、今日から大切なお子様をお預かりし、教職員一同、誠心誠意、心を込め、そして情熱をもってお子様を鍛え、成長させてまいる所存です。そのためには、本校の教育活動に対する保護者の皆様の御理解と御協力を欠かすことができません。どうか今後とも本校の教育活動に御支援を賜わりますよう、お願い申し上げます。
 結びに、新入生の皆さんが健やかに高校生活を過ごし、自分の進路目標を達成して笑顔で卒業してくれることを願い、式辞といたします。
令和2年4月6日             
愛知県立西尾高等学校長  鈴木雅文