人間は同じだけ時間を与えられたとしても、その使い方によって今後の人生を大きく変えます。世の中というのは不確実であり、割り切れないものです。それを受け入れ、その中に面白みと希望を見出し、困難な状況を克服することの大切さとすばらしさを知ることが大事です。やってみないとわからないから、人はチャレンジできます。
人工知能など先端技術の発達した時代を生きて行く若者にとって、大切なものは何でしょうか。人工知能の意味付けをするのは人間です。我々人間が「人間として正しい生き方」をしていかなければなりません。小学生の時に教わったようなことを、大人が守れなかったからこそ、今これほどまでに社会の価値観が揺らぎ、人の心が荒廃しているのだと思います。正しい生き方とは、けっして難しいことではないはずです。ごく当たり前の道徳心、「嘘をつくな」、「正直であれ」、「人をだましてはいけない」といったシンプルな規範の意味を、改めて考え直し、きちんと遵守することが、今こそ必要です。そして、若者たちが将来において、子供たちに向かって堂々とモラルを説ける大人になってください。
さて、今年は、東京オリンピック、パラリンピックが開催されます。アスリートたちの活躍とその道のりを知り、感動を得ましょう。一人のアスリートがこんなことを言っていました。「目標を叶えられたのは、他人と比較をするのではなく、過去の自分と現在の自分を見て、『昨日より良くなった』、『過去の自分より良くなった』と言えるように努力を重ねられたからです。その積み重ねが自分を成功へと導いてくれました。」
アスリートたちは、人の力を借り、人から学び、そして、人と支え合います。人間は自分一人で物事を成し遂げることはなかなかできません。誠実で、学ぶ姿勢のある人は、人の力を借りることのできる人です。
現在、世界に約77億を超える人々が暮らしています。その中で豊かな国で暮らしている人は、20%以下に過ぎないと聞きます。80%以上の60億もの人々が開発途上の貧しい国に住んでいます。多くの人たちが苦しんでいるのが現実です。食べ物がない、安い薬さえも手に入れることができないなど、貧しさが原因で亡くなる子どもの数は、実に5秒に1人いると言われています。このような現実があることを忘れてはいけません。
私たちは、時間に追われる生活の中にあっても、世の中の現実を理解し、人の心を理解しようとする人間でなければなりません。若い人たちには、そのような思いやりのある人間であっていただきたいと心から願います。